ジン事典
Volume 3

不死の街リヴァイヴァ編
12th SHOT「不死の街」

コルプス【CORPSE】
  「死者・死体」を意味するコープスのことと思われる。作中ではシンボルとして「数珠」「蝋燭」が登場する。「死者」から古戦場(墓場)を通 り三途の川を抜け蛇(医術・魔術の象徴)や老婆(魔女)を経て「甦り」へ至る、という仕掛けか。リヴァイヴァと合わせることでコープス・リバイバーというカクテル名になる。

ベルモット【Vermouth】
  語源はドイツ語のヴェルムート(にがよもぎ)から。フレーバードワインの一種で、白ワインににがよもぎなどのハーブを配合して造る。主な産地はイタリア・フランス。色はカラメル等でつけられるため、基本的に赤(ロッソ)が甘口、白(ビアンコ)が辛口。ジンとベルモットでつくるのがあのマティーニだ。

リヴァイヴァ【Reviver】
  日本で言う「迎え酒」のことで直訳すれば「生き返らせるもの」。Pick-Me-Up(引っ張り起こして)、Eye Opener(目覚まし)、Hair of the dog(毒をもって毒を制す・犬に噛まれて狂犬病になった時、その犬の毛を薬として用いた民間療法から)とも呼ばれる。そのものずばりのCorpse Reviver(死者を甦らせるもの)のレシピを紹介しておこう。(コープスリバイバーにはブランデーベースの別 レシピもある)
レシピ:ドライジン15cc、コアントロー15cc、キナ・リレー15cc、レモンジュース15cc、ペルノー1dashをシェイクしてカクテルグラスに注ぐ。


キナ・リレー【China Lilet】
  マラリアの特効薬として知られるキナの樹皮をつかったフレーバードワインアペリティフとして飲まれる。現在はほとんど輸入されていないようだ。

13th SHOT「老婆の唇」

ペルノー【PERNOD】
 「悪魔の酒」と呼ばれる幻の酒アブサン。 それの代用品としてアニスやスターアニスなどの香味を生かして開発されたのが「パスティス」(フランス語でアブサンに「似せて」(パスティゼ)作ることから)と呼ばれる薬草系リキュールです。 ペルノはその一種(厳密にはパスティスではなく、アニス酒の一種に分類されるが一般 にはパスティスとされている)で水を加えると黄色っぽく濁るのが特徴。アニスの香味が非常に薬臭く感じられ、日本人の好みにはあいにくい酒ですがはまると病みつきになるリキュールです。

14th SHOT 「七色の昇天」

コアントロー【COINTREAU】
  バーにこれが無くてははじまらない基本リキュールである、ホワイトキュラソーの王者と言われるのがコアントロー。フランス・ロワール地方のコアントロー兄弟が19世紀半ばに興した蒸留酒メーカーの製品です。 オレンジ果皮の爽やかな苦味と香りが素晴らしく、製菓原料としてもよく使われるリキュール。ジンとコアントロー、レモンジュースのカクテルはホワイトレディ(別 名ジン・サイドカー)。
 キュラソー・リキュールはオランダの名門リキュールメーカー、デ・カイパー社が1695年に南米ベネズエラ沖合のオランダ領キュラソー島産のオレンジ果 皮を原料に造ったリキュールに島の名前をつけて売り出したのが始まりで、無色のホワイトと琥珀色のオレンジ、着色料で色をつけたブルーやレッドがある。


ながらえ水【Aqua Vitae】
  おそらくは人類より早く生まれたであろう醸造酒に対し、蒸留酒は錬金術師に偶然「発見」された神秘の飲み物だ。 おそらく11世紀頃、「賢者の石」精錬のためにあらゆる実験を試みていた錬金術師がワインを蒸留して強烈なアルコール分を含み舌を焼く不思議な水を創り出した。錬金術師達はこれにワインの最も精緻な部分が抽出され、生命を長らえさせる不思議な力があると信じた。そしてその生命維持の秘薬を「生命の水」(アクア・ヴィテ)と名付けたと言う。

JING in 第七監獄編
15th SHOT「第七の監獄」

セブンスヘブン【SEVENTH HEAVEN】
  ジンとマラスキーノを使う辛口のショートカクテル。カクテル名(第七天)はユダヤ教においては七十万人の天使に護られた最上の楽園とされている。
レシピ:ドライジン40cc、マラスキーノ20cc、グレープフルーツジュース1tsp.をシェークしてカクテルグラスに注ぎ、ミントチェリーを飾る。


マラスキーノ【MARASCHINO】
  チェリー・リキュールの一種で無色透明のもの。現在のスロヴァニア、クロアチア原産のマラスカ種チェリーを原料にしたことからつけられた。チェリーから造るフルーツブランデー(キルシュワッサー)にシロップ等を添加したものに近いリキュール。チェリーリキュールにはチェリーを漬け込んで作る赤い色の俗にチェリーブランデーと呼ばれるものもある。
実際には薬臭い香味であまりチェリーらしさを感じない。通好みのリキュール。


カンパリ【CAMPARI】
 おそらくハーブ(薬草)系・ビター(苦味)系のリキュールの中で日本で一番飲まれているのがこのカンパリだろう。19世紀半ばイタリアのガスパーレ・カンパリによって創られたリキュール。特徴的な苦味はビターオレンジの果 皮、コリアンダー、シナモン等30種類以上のハーブ・スパイスによるもの。鮮やかな赤い色は合成着色料では無く、ウチワサボテンにつくコチニール貝殻虫(赤い染料が取れる益虫。メキシコの特産物)から抽出した天然色素を使っている。ちなみにカンパリはイタリア語のカンパーレ(平原)から来た名前で、日本人で言うならさしずめ平野さん、野原さんにあたる。

ベネディクティン【BENEDICTINE】
  シャルトリューズと双璧をなす薬草系リキュールの雄。フランス北部ノルマンディー地方のベネディクト派修道院において1510年に創られたと伝えられる。18世紀末にフランス革命により修道院の財産が国に没収されリキュールの製造も中断されたが、地元の商人によって製法記録が発見・復元され、現在は修道院跡地に建つルネサンス様式の建物で製造されている。薬草の香味が華やかなシャルトリューズに比べベネディクティンはどっしりと深みのある高貴な甘さが特長。ラベルに書かれたDOMの文字は祈りの言葉Deo Optimo Maximo(至善至高の神に捧ぐ)の略。1898年に描かれたアルフォンス・ミュシャのアール・ヌーボー調のポスターはポスター芸術として評価が高い。

16th SHOT「夢の牢獄」

アカシア【ACACIA】
 ジンとベネディクティン、それにキルシュワッサーをアクセントに使うやや辛口のショートカクテル。1928年、南フランスのビアリッツで行われたカクテルコンペ(競技会)で一位 に入賞した。おそらくコンペによって世に知られることになったカクテルの中で最も古いものと思われる。
レシピ:ドライジン45cc、ベネディクティン15cc、キルシュワッサー2dashをシェークしてカクテルグラスに注ぐ。


17th SHOT「太陽のくしゃみ」
18th SHOT「故郷のありか」


アマルコルド編
extra shot1 アマルコルド(前編)


ミント【MINT】
  ペパーミント(ハッカ)のリキュール。スーッとする清涼感が特徴の薬草系リキュールだ。緑の色がつけられたグリーンミントと無色透明のホワイトミントがある。フランス語ではクレーム・ド・マント(Creme de Menthe)。
 なおこのシリーズに登場する子供達の名前はあえて酒の原料になるものの意味で命名されたそうで、この場合は酒のミントではなくハーブのミントと取るべきだろう。


クローブ【clove】
  フトモモ科の常緑樹の青いつぼみを乾燥させたハーブで和名は丁字(チョウジ)。甘い香りで洋菓子や料理のスパイスとして用いられることが多い。クローブそのもののリキュールというのは無さそうだが、さまざまなリキュールに補助的に用いられている。

ポム【pomme】
 フランス語でりんごの意。りんごの酒にはアップルブランデー(フランス・ノルマンディー地方で造られるカルヴァドスが有名)、アップルリキュール(ドイツ・フランスで多く造られる)、ワイン(シードル)がある。

カシス【CASSIS】
 カシスはいわゆるベリー類に属し、黒すぐり(ブラック・カラント)と呼ばれる潅木の実でフランス・ブルゴーニュ地方の特産品だ。特にキールで知られるディジョン市のものが有名。 これをジュースにしてスピリッツとブレンドしたのがカシスリキュール。一番よく見かけられるのはルジェ社のものだがこれは造り物っぽい味がしておすすめできない。
なお、カシスやフランボワーズなどのベリー系リキュールは開栓後はジュース・ワインに準じた扱いが必要で、なるべく早く飲みきらないとまずくなる(腐りはしないが)。開栓したボトルを冷蔵庫に入れていないバーはちょっと常識を欠くと考えてよい。